泌尿器科

当科の特徴

 第一線の病院としてエビデンスにもとづいた最新の医療を提供することをこころがけています。泌尿器科全般を扱っておりますが、その中でも癌(腎癌、腎盂尿管癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌)、尿路結石症、前立腺疾患が多くなっています。内視鏡治療にも積極的に取り組んでおり、腎・副腎疾患に対する腹腔鏡治療、腎盂鏡・尿管鏡による診断・治療などに特色を有しています。特に手術療法、化学療法、放射線療法は癌治療の3本柱と言われていますが、第4の柱としての癌免疫療法が腎癌と膀胱癌で治療可能となり、効果を上げています。

前立腺癌

 まずは2022年7月に導入した前立腺癌の診断から治療までをサポートするシステムとして開発された汎用超音波画像診断装置である、KOELIS社トリニティ(以下、トリニティ)を用いた当科の新しい取り組みについてご紹介いたします。

<現状における前立腺生検の問題点>

 現在、前立腺癌の診断において、その局在診断に非常に重用されているのが、Multiparametric MRIであります(図1)。Multiparametric MRIは、大事な所見のひとつであるT2強調画像に加えて、拡散強調(DWI)画像、DWIの処理画像であるADC map、Dynamic contrast-enhanced T1画像(DCE)などの要素を用いることにより、多角的に前立腺癌が疑われる部位をターゲットとして描出することが可能になっています。

図1.Multi-parametric MRI

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 しかし、実際の前立腺生検は、経直腸的前立腺超音波ガイドに行われるため、超音波下でもMRIで指摘されているターゲットが描出できる場合は問題ないのですが、移行域(TZ)のターゲットや辺縁域(PZ)でも特に小さなターゲットなどは、超音波で描出困難な場合が多く見受けられます。せっかくMRIでターゲットが指摘されていても超音波ガイド下では正確な病巣がわからず、頭の中でMRI画像と超音波画像を融合させるCognitive Fusion 生検(図2)を行わざるを得ず、MRI上でのターゲットを正確に捉えられていないのが、前立腺生検の現状の問題点でありました。

図2.Cognitive fusion

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<トリニティを用いた前立腺生検の利点:正確なターゲット生検が可能>

 上記の問題点を解決するため、当科ではトリニティを導入いたしました。トリニティは事前に撮像されたMRI画像に、3Dの超音波画像をコンピューターでリアルタイムに融合させることにより、MRIと超音波の3D融合画像を作ることができる装置です(図3)。

図3.KOELIS社トリニティ

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 この3D融合画像に癌が疑われる場所を映すことで、どこをターゲットとして生検すればよいかが鮮明にわかるようになります。しかも、トリニティはVirtual biopsy mode を使用して、実際の穿刺前に生検位置のシュミレーションが可能で、また3D マッピングにより生検した部位を可視化し、生検部位の記録を3D画像で正確に残すことが可能なため、ターゲットを外した場合でもやり直すことができるようになりました。
 当科では、このターゲット生検に加えて前立腺自体の8~10か所の決まった場所からの生検(Systematic biopsy)を加えることにより、治療が必要な癌だけを効率的に採取し、それにより今までよりさらに診断率を向上させることを目標としています(図4)。

図4.MRI/US fusion targeted biopsy

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<トリニティの今後の応用>

 当院ではさらに、トリニティの特性をいかした今後の応用に期待しています。 具体的には、生検した部位の記録を3D画像で正確に保存することや、過去の画像と融合することもできるため、以下のことが期待できます。

1.手術支援ロボットや放射線治療による治療への応用

2.PSA監視療法を行っている患者に再生検を行う際、過去の記録を参考にすることが可能

3.現在の高度先進医療(前立腺凍結療法などの局所療法)への応用が可能

 このトリニティを駆使して、地域の患者さんや先生方のご期待に応えることができますように努力してまいる所存ですので、今後ともご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

KOELIS社トリニティ導入による高精度前立腺癌診断を実現

 次に、2021年末に導入した低侵襲手術支援ロボット ダヴィンチ(da Vinci)の最新機種である Xⅰを用いた当科の新しい取り組みについてご紹介いたします。

<術後の患者負担を大きく軽減 前立腺癌に対するロボット支援手術>

ダヴィンチ画像

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 ダヴィンチは、低侵襲技術を用いて複雑な手術を可能とするために開発されました。高画質で立体的な3Dハイビジョンシステムの手術画像のもと、人間の手の動きを正確に再現する装置です。術者は鮮明な画像を見ながら、人の手首よりはるかに大きく曲がって回転する手首を備えた器具を使用し、精緻な手術を行うことができます。
 患者さんにはよく「ロボットが手術をしてくれるのですね。」と質問されますが、ロボット支援手術は完全に医師の操作によって実施されます。
 泌尿器科の癌領域では、現在罹患率男性1位の前立腺癌に対して、このダヴィンチを用いたロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術(RARPまたはRALP)を行っています。RARPまたはRALPは、以前の開腹手術と比べて短い入院期間で、出血量も少なく抑えることができます。また術後の尿失禁などの合併症もかなり軽減させることができ、非常に低侵襲なすぐれた手術法と言えます。

<患者QOL向上の更なる追及 先進的技術を駆使した当科の取り組み>

 当院ではさらに、手術中に経直腸超音波にてリアルタイムに前立腺や重要な隣接臓器を描出することにより、腹腔鏡だけでは認知できない死角を確認することを可能にする先進的技術を用いています。これはリアルタイム超音波ガイダンス法という、京都府立医科大学でも実践されている世界をリードする技術です。この先進的画像誘導技術により、術者が腹腔鏡だけでは見えないがん病巣の存在部位を確認することが可能になり、腫瘍の完全切除率の向上と合併症の低減が期待できます(図5、図6)。uro_0013

 この、リアルタイム超音波ガイダンス法は、術後尿失禁の早期改善や勃起機能温存の向上による、術前から術後への生活の質(QOL)の維持への貢献が期待できます。
 ダヴィンチを駆使して、地域の患者さんや先生方のご期待に応えることができますように努力してまいる所存ですので、今後ともご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

低侵襲手術支援ロボット ダヴィンチ(da Vinci)最新機種Xⅰの導入

腎癌

 腎癌に対しては、ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術(RAPN)を施行しており、患者さんに対してできる限り安全で低侵襲なQOLの良い治療を行うことを目標にしております。
 手術療法(ロボット、腹腔鏡)以外に進行性腎癌に対し分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬による薬物治療、放射線療法などを行っています。RAPNに関しては現在のところ、T1a以下の腫瘍に限定しておりますが、症例によっては今後T1bなど、適応拡大を検討しております。

膀胱癌

 がんのstageにより手術、膀胱内注入療法、化学療法、免疫チェックポイント阻害薬、動注療法、放射線療法を選択しています。手術のほとんどは内視鏡で行いますが、進行した膀胱がんに対しては、ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘術(RARC)で実施しております。
 患者さんに対してできる限り安全で低侵襲なQOLの良い治療を心掛けております。

●光線力学診断(PDD)を用いたTURBT
 当院では、従来のTUR-BT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)では、視覚的に確認できなかった膀胱内の腫瘍を特殊な光線を当てることによって「正常組織」と「がん組織」を区別することができる「PDD-TURBT」を実施しております。
がんの検出率の向上及びがんの再発低下に貢献し、患者さんの身体的負担軽減にもつながる最新の治療です。
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●ダヴィンチXiを用いたロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術
 手術支援ロボットを用いて筋層浸潤性膀胱がんに対して「膀胱悪性腫瘍手術」を実施しております。また、筋層非浸潤性膀胱がんであっても、悪性度が非常に高いがんや再発により深達度が進行するがん、BCG膀胱内注入治療に反応しない上皮内がんの場合などにも適用します。
 がんの状態や年齢、全身状態、腎機能障害の程度や手術歴などを考慮し、患者さんに最適な治療方針を決定します。

前立腺肥大症

 前立腺肥大症に対しては内服治療を行い効果が十分でなければ手術を行います。手術は最先端の前立腺肥大症への低侵襲手術として接触式前立腺レーザー治療(蒸散術:CVP)を2018年7月より導入しました。
 CVP(Contact laser Vaporization of the Prostate)は、前立腺の肥大組織に高熱を与え、組織中の水分や血液を一瞬で沸点に到達させて蒸発させ、組織を消失させてしまうという画期的な手術方法です。従来の前立腺肥大症手術と同等の効果が期待できる上に、出血は確実に減少させることのできる、より安全性の高い手術と言えます。
 手術時間や入院期間の短縮により早期の社会復帰が可能で、一番大きな特徴が抗凝固薬の休薬が不要なことが挙げられ、合併症の軽減など複数の利点があげられ、近隣の先生方より多数の患者さんを手術目的で紹介いただいております。

尿路結石症

 自然排石のない尿路結石症に対しては個々の病態に応じてESWL(体外衝撃波結石破砕術)、PNL(経皮的手術)、TUL(経尿道的手術)を行っています。f-TUL(軟性の内視鏡とレーザー砕石装置を用いるTUL)も導入しています。2016年4月以降、尿路結石の紹介患者さんが増加し、TUL、f-TUL、PNLなどの手術件数が著名に増加しております。2022年よりより治療効果の高い、砕石術用レーザー SHPINX® JRを導入し、治療効率をあげています。

 

手術症例数・治療実績

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連携病院・開業医の先生方へ

 いつも病々連携、病診連携でお世話になっております。おかげ様で紹介率も高く、ご紹介いただいた患者さんに対しては迅速に診断し治療を行うことを心がけており、病状のおちついた患者さんについては逆紹介させていただいております。
 当科では、前立腺癌に限らず、泌尿器科疾患に関しては、地域医療連携室経由で外来の予約を受け付けております。また、前立腺癌の治療後の患者さんは基本的に逆紹介を行い、再発による当院への再紹介の基準も設けておりますので、ご相談いただければ迅速に対応させていただきます。 今後ともよろしくお願い申し上げます。

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スタッフ

職 名 名 前 卒業年度 専 門 資 格
部 長 doctor_7319邵 仁哲 H3

泌尿器科全般

性機能障害

男性不妊症

男性更年期障害

ロボット手術

日本泌尿器科学会専門医・指導医
日本泌尿器内視鏡学会
    泌尿器腹腔鏡技術認定医・審査委員
日本内視鏡外科学会泌尿器腹腔鏡技術認定証
日本性機能学会専門医
テストステロン治療認定医
ロボット支援手術certificate
副部長 Dr_hotta_2023_R
堀田 俊介
H21 泌尿器科全般 日本泌尿器科学会専門医・指導医
医 師 早川 啓太 H28   日本泌尿器科学会専門医
ロボット支援手術Certificate
医 師 家原 昌弘 H29   日本泌尿器科学会専門医
ロボット支援手術Certificate
医 師 田嶋 久弥 R3    

外来当番表

 
1診 堀田(新患) 堀田(再来) 邵(新患) 平原(再来) 邵(再来)
2診 田嶋(再来) 早川(新患) 家原(再来) 早川(新患) 家原(新患)