血液内科

診療方針

  • 血液内科は白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫などの血液悪性腫瘍、再生不良性貧血などの骨髄不全、免疫性血小板減少性紫斑病・溶血性貧血などの免疫学的疾患、先天性・後天性凝固異常まですべての血液疾患を診療しています。
  • 当科は7名の血液内科医がチームで診療に携わっており、5名が血液専門医、4名が移植認定医、2名が輸血認定医、1名ががん薬物療法専門医の資格をそれぞれ有し、充実した体制を整え、新しい治療法を積極的に取り入れ、先進的でありかつ最善の診療を提供します。
  • 当院は日本血液学会研修施設であり、完全無菌室8床を備え、造血器悪性疾患を中心に血液疾患全般にわたり迅速な対応が可能です。
  • 種々の合併症を有した症例に対しても院内各科と十分連携をとり対応いたします。
  • 看護部門・薬剤部・検査部・リハビリテーション部門・栄養部門・緩和チームなど院内各専門スタッフと密に協力し、チームで診療に当たらせていただきます。
  • 心理的ケアにも留意しつつ、患者さんの人生観、ライフスタイルに合わせ、十分なインフォームドコンセントのもと患者さんとともに治療法を選択します。
  • 入院はできる限り短期間とし、外来での化学治療を積極的に施行しています。
  • 当科は非血縁者間骨髄移植・採取認定診療科、さい帯血バンク登録医療機関であり、診療の一つの柱として造血幹細胞移植に積極的に取り組んでいます。悪性リンパ腫や多発性骨髄腫に対する自家末梢血幹細胞移植、急性白血病、骨髄異形成症候群などの造血器腫瘍や再生不良性貧血に対する同種造血幹細胞移植(血縁骨髄、血縁末梢血、非血縁骨髄およびさい帯血移植)を実施しています。近年はHLA不一致移植も積極的に導入しています。また骨髄バンクドナーの骨髄採取を多く実施し、本邦の造血幹細胞移植の推進にも貢献しています。
  • 当科の診療のもうひとつの大きな柱は血液疾患治療における新しいエビデンス(証拠)の構築への参画・参加です。当科は学会などが推奨するガイドラインに沿った医療を実践していますが、さらに多施設共同臨床研究に積極的に参画・参加することにより、本邦において現時点で実施できる最新・最善の医療を提供できるように心がけています。これらの臨床研究の結果は今後の医療に必ず役立つものとなると信じています。
  • また、新薬の治験にも積極的に取り組んでいます。現状ではもはや治療法がない患者さんにも新たな治療を受けていただく機会を提供できることを目指し、現在も急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫、再生不良性貧血などの疾患に対する新薬治験が進行中です。さらに、新しい検査法の治験にも取り組んできました。これらの治験を通じて画期的な未来の血液疾患治療の確立に貢献することを目指しています。
  • 一方で治癒不可能な患者さんや高齢の患者さんに対して、患者さんやご家族の言葉に耳を傾け、個々の異なる価値観を尊重し、QOLを損なわない医療を提供することも決して忘れないよう心がけています。

Hematology_01

病棟でのカンファレンス

Hematology_02

多職種が参加しての移植カンファレンス

 

   bone marrow transplantation01 bone marrow transplantation02

移植病室

症例数・治療実績

過去5年間の主要疾患の新規症例数と造血幹細胞移植件数

年度 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
急性骨髄性白血病 13 11 10 16 13 18
急性リンパ性白血病 4 3 4 6 6 3
慢性骨髄性白血病 3 3 6 8 4 5
慢性リンパ性白血病 4 2 2 2 3 1
慢性骨髄増殖性疾患 15 11 15 17 4 8
ホジキンリンパ腫 4 2 3 4 3 5
非ホジキンリンパ腫 51 49 61 63 58 66
骨髄異形成症候群 13 27 12 21 13 30
形質細胞腫瘍 17 17 19 18 15 16
自家造血幹細胞移植 2 10 11 6 5 3
同種造血幹細胞移植 1 4 11 14 14 10

 

 

代表的な疾患とその治療方針

1.急性骨髄性白血病
 シタラビン(キロサイド)+イダルビシン(イダマイシン)もしくはダウノルビシン(ダウノマイシン)にて寛解導入を実施し、寛解を獲得後3~4コースの地固め療法を行います。さらに遺伝子異常を専門施設の協力を得て詳細に検討し、高リスク症例には第1寛解期に造血幹細胞移植を考慮します。急性前骨髄球性白血病にはレチノイン酸(ATRA:ベサノイド)±化学療法にて寛解導入を行い、地固め療法後はAm80(アムノレイク)などでの維持療法を検討します。また症例によっては亜ヒ酸の投与も実施します。

2.急性リンパ性白血病
 JALSG(日本成人白血病研究グループ)プロトコールまたはHyper-CVAD療法にて寛解導入化学療法を行います。さらに地固め療法を施行したのち、通常2年間維持療法を実施します。治療の経過中に微小残存病変(MRD)の測定を実施し、腫瘍細胞の残存が明らかになった症例については、第1寛解期に造血幹細胞移植を積極的に行います。フィラデルフィア染色体陽性例にはチロシンキナーゼ阻害薬(ダサチニブ(スプリセル)もしくはポナチニブ(アイクルシグ))併用化学療法を実施し、移植適応年齢の患者さんには第一寛解期での移植を実施します。

3.骨髄異形成症候群
 低リスクの患者さんには、エリスロポエチン濃度、トロンボポエチン濃度や発作性夜間血色素尿症(PNH)血球の有無などを検索し、病態を十分解析したうえで、エリスロポエチン製剤の投与や免疫抑制療法を検討します。高リスクの患者さんには脱メチル化剤であるアザシチジン(ビダーザ)による化学療法またはシタラビン(キロサイド)+アクラルビシン(アクラシノン)+G-CSF併用療法(CAG療法)による寛解導入療法を行います。65~70歳以下の患者さんには同種造血幹細胞移植を考慮します。治療抵抗性になった患者さんには新規薬剤の治験参加を検討します。

4.慢性骨髄性白血病
 慢性期の患者さんはチロシンキナーゼ阻害薬であるダサチニブ(スプリセル)またはニロチニブ(タシグナ)にて治療を行います。有害事象(副作用)などで継続できない場合や治療抵抗性を示す場合は薬剤をもう一方の薬剤に変更するか、新規チロシンキナーゼ阻害薬であるボスチニブ(ボシュリフ)やポナチニブ(アイクルシグ)の投与を検討します。分子生物学的寛解(原因遺伝子異常であるBcr-Abl遺伝子が高感度PCR法で検出されない)が長期にわたり持続する場合は臨床研究に参加していただくなどした上でチロシンキナーゼ阻害薬の中止を目指します。移行期、急性転化の患者さんには化学療法後に同種造血幹細胞移植を考慮します。

5.非ホジキンリンパ腫
 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫にはリツキシマブ(リツキサン)併用CHOP療法を6~8コース実施します。高リスク症例は第1寛解期に、再発症例ではリツキシマブ併用ICE療法、CHASE療法などの救援療法を実施した上で化学療法に効果があった65~70歳以下の患者さんには自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を実施します。
 濾胞性リンパ腫にはオビヌツズマブ(ガザイバ)+ベンダムスチン(トリアキシン)療法もしくはオビヌツズマブ(ガザイバ)併用CHOP療法を6コース行い、2年間の維持療法を実施します。年齢などを考慮しリツキシマブ(リツキサン)を選択することもあります。濾胞性リンパ腫は再発を繰り返すことが多い疾患ですが、再発時には寛解維持期間の長さによって前回と同様の治療を実施するか治療法を変更するか検討します。また組織型が変化していないかを調べるためにリンパ節の再生検を実施させていただきこともあります。再治療にもかかわらず再発を繰り返す症例には同種造血幹細胞移植の実施を目指します。
 縦隔大細胞型B細胞リンパ腫などの特殊な病型に対してはDose-adjusted EPOCH療法などの有効性が高いとされている治療法を選択します。また、CD5陽性B細胞リンパ腫や精巣原発、乳腺原発など中枢神経への再発のリスクが高いとされている病型に関しては予防的な抗がん剤の髄液中への投与やメソトレキサート(MTX)大量療法を組み込んだ治療法を検討しています。
T細胞リンパ腫にはCHOP療法後に自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法の実施を検討します。またロミデプシン(イストダックス)、プララトレキサート(ジフォルタ)、フォロデシン(ムンデシン)、モガムリズマブ(ポテリジオ)、ブレンツキシマブ・ベドチン(アドセトリス)などの新規薬剤も積極的に使用します。さらに難治症例には同種造血幹細胞移植も考慮します。

6.ホジキンリンパ腫
 進行期ホジキンリンパ腫に対しては、ABVD療法もしくはブレンツキシマブ・ベドチン(アドセトリス)+AVD療法にて治療を行います。再発・難治例には抗PD-1抗体(ニボルマブ(オブジーボ)、ペムブロリズマブ(キトルーダ))の投与や造血幹細胞移植を検討します。

7.多発性骨髄腫
 65~70歳以下の患者さんにはボルテゾミブ(ベルケイド)+レナリドミド(レブラミド)+デカドロン(VRD)療法にて寛解導入を図り、その後自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法を行い、さらに地固め療法および維持療法を施行しできるだけ長期の寛解維持を目指します。70歳以上の患者さんにはボルテゾミブ(ベルケイド)+デカドロン(Bd)療法、減量したVRD療法またはレナリドミド(レブラミド)+デカドロン(Rd)療法にて治療を開始し、ベルケイドまたはレナリドミドで維持療法を行います。また治療抵抗例にはカルフィルゾミブ(カイプロリス)+レナリドミド+デカドロン(KRd)療法、ポマリドマイド(ポマリスト)+デカドロン(Pom-DEX)療法またはタラツムマブ(ダラザレックス)やエロツズマブ(エムプリシティ)などの抗体医薬併用療法などで救援治療を行います。

8.再生不良性貧血
 シクロスポリン+ATGにて治療を行います。微少発作性夜間血色素尿症(PNH)血球の測定などの精密検査を行い、効果発現の予測を行います。またトロンボポエチン受容体作動薬の併用も積極的に実施します。重症例・適応例には同種造血幹細胞移植を早期に実施します。

9.ITP(特発性血小板減少性紫斑病)
 プレドニンの投与、ピロリ菌の除菌などを症例に則して組み合わせて治療します。また難治例にはリツキシマブ(リツキサン)やトロンボポエチン受容体作動薬(レボレードもしくはロミプレート)の投与も検討します。

最近の話題

造血器悪性腫瘍の治療は急速に進歩しています。最近のトピックスと当科の取り組みを述べます。

  1. 移植適応の拡大:骨髄非破壊的移植の導入により、おおよそ70歳までの高齢者患者さんや臓器障害を有する患者さんにも同種造血幹細胞移植が可能になっています。当科でも移植時70歳を超える患者さんの長期生存例を経験しています。また、移植適応患者さんに適切な時期に適切なドナーから同種造血幹細胞移植を実施することにより急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病の治療成績は確実に向上しています。当科も血縁骨髄、末梢血、非血縁骨髄、さい帯血すべてのドナーソースからの移植が可能な体制を整え、急性白血病の治療成績向上を目指しています。またHLAが不一致(半合致)のドナーさんからの移植も、移植後にシクロホスファミド(エンドキサン)を投与する方法(Post-CY法)により可能になりつつあり、当科も臨床試験に参加するなどして積極的に取り組んでおり、非寛解期の症例に対しても比較的良好な治療成績が得られています。
  2.  急性白血病に対する新規薬剤の導入:近年急性白血病に対して薬剤薬剤が次々と導入されました。まず、予後不良とされてきたFLT3遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病に対してFLT3阻害薬であるギルテリチニブ(ゾスパタ)やキザルチニブ(ヴァンフリタ)が使用可能となり、移植療法への橋渡し治療などに用いられています。さらに、急性リンパ性白血病に対しても、イノツズマブ・オゾガマイシン(べスポンサ)や二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体ブリナツモマブ‘(ビーリンサイト)などの画期的な薬剤が本邦にも導入されました。当科においても既にこれらの薬剤を使用して白血病の治療成績の向上を図っています。
  3. 悪性リンパ腫治療の進歩:悪性リンパ腫においては、新たな抗体医薬、ベンダムスチンなどの新規抗がん剤の導入、DA-EPOCH療法などの新しいレジメンの開発により治療成績が向上しています。当科では、まず当院病理部門や京都府立医科大学血液内科の協力を得て分子病態まで踏み込んだ正確な組織診断を得るようにしています。そのうえで積極的に新規薬剤、新規治療レジメンを取り入れ、リンパ腫の治療成績のさらなる改善を目指しています。
  4. 多発性骨髄腫治療の進歩:多発性骨髄腫に化学療法には、複数のプロテアソーム阻害薬、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミドなどの免疫調整薬、タラツムマブやエロツズマブなどの抗体医薬といった新規薬剤が次々の導入されました。その結果、高齢者も含めて多発性骨髄腫患者さんの生存期間は明らかに延長しています。特にダラツムマブ(ダラザレックス)という抗体医薬は再発難治性の多発性骨髄腫に高い有効性が確認されており、治癒困難とされていた本疾患を治癒させる可能性をも期待されています。ただし、高率に輸注関連反応(咳嗽、呼吸困難、発熱などが主な症状)の発生があり、肺疾患を有する患者さんや高齢の患者さんに使用する際は十分や予防策と注意深い観察が必要です。当科でも有害事象の発生に十分気を付けながら積極的に新規薬剤を早期に導入し治療成績の向上を図っています。
  5. 慢性骨髄性白血病におけるTreatment free remission(無治療寛解維持):慢性骨髄性白血病は従来造血幹細胞移植を実施しない限り治癒は望めないと考えられていました。しかし現在はチロシンキナーゼ阻害薬を導入することにより多くの患者さんが深い分子生物学的寛解を獲得できるようになり、一部の患者さんは治療を中断しても再発しないTreatment free remission(無治療寛解維持)が得られることがわかってきました。当科においても条件を満たす患者さんには治療の中断を試みています。 また、新しく導入されたポナチニブ(アイクルシグ)という薬剤は、従来の薬剤が無効であったT315Iという遺伝子変異を有する症例にも有効であるとされており、慢性骨髄性白血病患者さんの治療成績のさらなる向上が期待されています。
  6. 骨髄異形成症候群に対するメチル化阻害薬:骨髄異形成症候群に対しては脱メチル化薬アザシチジン(ビダーザ)の導入により生存期間の延長が得られています。さらなる生存期間の延長を目指して当科では新規薬剤の治験を実施中であります。

連携病院・開業医の先生方へ

  1. 迅速な患者受け入れ:血液疾患は急激に発症し、さらに病状が急速に変化することがしばしば見受けられます。そこでご紹介いただく患者さんをいつでも受け入れさせていただけるように体制を整備しています。夜間や休日でも救命救急センターで対応(オンコール制)させていただきます。
  2. 垣根の低い血液内科を目指して:血液疾患は発症頻度も低く、血液内科医以外の先生方にはとかく馴染みが薄く関わりにくいものと推察します。そこで些細なことでも結構ですのでいつでもご相談いただければと考えています。

治療成績

Hematology2020_A
Hematology2020_B
Hematology2020_C
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Hematology2020_F

スタッフ

職 名 名 前 卒業
年度
専 門 資 格
院 長 Dr_kobayashi201610 小林 裕 S55 血液疾患
内科一般
日本内科学会代議員・指導医・認定医
日本血液学会指導医・専門医
日本輸血・細胞治療学会認定医
日本がん治療認定医機構認定医
造血細胞移植認定医
日本内科学会評議員
近畿血液学地方会評議員
京都府立医科大学客員講師
京都府立医科大学臨床教授

副院長

Dr_uoshima魚嶋 伸彦 S62 血液疾患
内科一般
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本血液学会代議員・指導医 ・専門医
日本造血細胞移植学会評議員・認定医・広報委員 
日本検査血液学会評議員
日本自己血輸血・周術期輸血学会 日本輸血・細胞治療学会 学会認定・自己血輸血責任医師
日本がん治療認定医機構認定医
近畿血液学会評議員
近畿さい帯血バンク臨床評価委員
細胞治療認定管理師制度協議会細胞治療認定管理師
日本骨髄バンク調整医師
日本輸血・細胞治療学会認定医
京都府立医科大学臨床教授
京都府立医科大学客員講師
副部長 KamitsujiDr上辻 由里 H11   日本内科学会総合内科専門医
日本血液学会指導医・専門医
日本造血細胞移植学会認定医
細胞治療認定管理師制度協議会細胞治療認定管理師
日本骨髄バンク調整医師
医 長 佐々木 奈々 H15   日本血液学会専門医・指導医
日本内科学会総合内科専門医・指導医
日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
ICD制度協議会インフェクションコントロールドクター(ICD)
日本骨髄バンク調整医師
医 長 堤 康彦 H15   日本血液学会専門医
日本内科学会総合内科専門医・認定医・指導医
日本造血細胞移植学会認定医
日本骨髄バンク調整医師
医 師 小森 友紀子 H24   日本内科学会認定医 
医 師 宮下 明大 H28