脳神経内科(神経内科)

診療方針

 脳神経内科は,脳・脊髄・末梢神経・筋肉の疾患の診療を行います.その中でも,当院の救命救急センターに搬入される神経救急患者,特に脳卒中患者を多数診療していることが特徴です(⇒症例数・治療実績).救命救急センター内に設置された包括的脳卒中センター(⇒)では,脳卒中診療経験を有する脳神経外科医または脳神経内科医が,夜間・休日も院内に常駐して脳卒中の救急搬入に対応しています.脳神経内科では,超急性期脳梗塞に対する再開通療法とともに長期脳卒中再発予防にも積極的に取り組んでいます.

 外来では,かかりつけ医との連携を推進しており,紹介外来制を原則としています(2020年度地域医療支援病院紹介率63.3%).紹介患者の診断結果は紹介医に報告するとともに,連携医の先生方と共有すべき神経疾患については,釜座脳神経内科勉強会(年1回開催,但し2020年,2021年はCOVID-19感染対策のため中止)で報告・ディスカッションしています.

急性期脳卒中診療体制

 包括的脳卒中センターでは,脳神経外科と協力して脳卒中診療を行っています.脳神経内科は,すべての虚血性脳卒中(脳梗塞,一過性脳虚血発作)と,保存的治療が適応となる出血性脳卒中(脳内出血)を担当します.年間約400例の急性期脳梗塞診療を行っており,京都府内でも随一の診療実績を有します(⇒症例数・治療実績).発症4.5時間以内のアルテプラーゼ(rt-PA)静注療法は,2005年秋の認可以来400例以上に行い,約1/3が3ヶ月後に障害のない状態(modified Rankin Scale 0または1)に改善しました.また,近年治療成績が飛躍的に向上したカテーテルを用いた脳血栓回収療法は,脳神経血管内治療学会専門医(または同専門医に準じる経験を有する脳血栓回収療法実施医)である脳神経内科医と脳神経外科医が協同して行っています.

 ラクナ梗塞やbranch atheromatous disease(BAD)型梗塞などの穿通枝梗塞は,急性期に症状が動揺・増悪して重度の運動麻痺が残存することが少なくありませんが,急性期からの抗血小板療法の組み合わせによる強化抗血小板療法が有用である可能性があり(Yamamoto Y, Nagakane Y, et al. Int J Stroke, 9: E8, 2014.),最近ではアルガトロバン,抗血小板薬2剤,スタチンを併用するスタチン併用多剤抗血栓療法(MACS: Multiple Antithrombotic therapy Combined with Statin)を行っています(永金義成,田中瑛次郎,他.BRAIN and NERVE 70: 557-562, 2018.).

慢性期脳卒中診療体制(脳卒中再発予防外来)

 急性期治療の進歩や回復期リハビリテーションの充実により,脳卒中患者の社会復帰率,在宅復帰率が向上するにつれて,脳卒中再発予防の重要性が増してきました.虚血性脳卒中患者の脳卒中再発率は高く,発症後1年で8~10%,5年で18~34%と報告されていますが,頸動脈内膜剥離術や頸動脈ステント留置術などの外科的治療とともに,危険因子の管理や抗血栓療法などの内科的治療の有効性を示すエビデンスが蓄積されつつあり,こうしたエビデンスに基づいた治療を複合的・長期的に行うことにより脳卒中再発は減少すると予想されます.2014年度に虚血性脳卒中で当科に入院した371例の累積脳卒中再発率は,90日で7%,1年で10%,2年で12%,3年で14%でした(永金義成,田中瑛次郎,他.京都第二赤十字病院医学雑誌 40: 36-44, 2019.).

 当科退院時に最適な再発予防方針がたてられるよう,入院中には徹底した脳卒中再発リスク評価を行い,病状が落ち着いた時期にかかりつけ医へ紹介しますが,当科の脳卒中再発予防外来でもフォローアップさせていただきます.ここでは,脳卒中再発や無症候性脳梗塞・脳出血の確認,危険因子や頭頸部血管病変の再評価,退院時の再発予防方針の見直しを行い,かかりつけ医と連携しながら長期に渡る脳卒中再発予防を目指しています.

症例数・治療実績

 (年度) 2015 2016 2017 2018 2019 2020
年間神経内科入院数 561 572 630 640 723 756
脳血管障害 420 437 477 468 535 578
  脳梗塞・一過性脳虚血発作 336 345 351 390 410 442
  脳出血・その他の血管障害 84 92 126 78 125 136
発作性・機能性疾患(てんかんなど) 30 31 33 71 70 81
感染性・炎症性疾患 16 17 15 10 17 13
末梢神経疾患 12 20 21 9 9 6
中枢性脱髄疾患(多発性硬化症など) 8 3 10 0 3 2
変性疾患(パーキンソン病、脊髄小脳変性症など) 13 20 15 19 16 24
筋疾患 14 2 7 6 7 9
脊椎・脊髄疾患 8 4 3 1 10 5
腫瘍性疾患 0 4 1 0 1 1
その他(内科疾患に伴う神経疾患など) 40 34 48 56 55 37

modified-Rankin-Scale_2020

急性期虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作入院患者の治療実績(2014~2018年度)

  2014年度 2015年度 2016年度 2017年度 2018年度
発症7日以内の入院患者数
(同年の再発入院を除く)
371例 373例 391例 379例 371例
平均年齢(歳) 74.1 75.8 74.5 76.2 76.0
入院時NIHSS,中央値(四分位) 3 (1-9) 3 (1-6) 3 (1-8) 3 (1-8) 3 (1-7)
平均在院日数(日) 28日 24日 25日 23日 22日
日常生活自立(mRS 0-2),退院時 64% 67% 59% 56% 59%
日常生活自立(mRS 0-2),3ヶ月後 67% 69% 62% 60% 64%
日常生活自立(mRS 0-2),1年後 63% 68% 60% 56% 58%
死亡率,入院中 4% 2% 5% 4% 3%
死亡率,3ヶ月後 4% 5% 7% 5% 6%
死亡率,1年後 10% 8% 13% 14% 15%
脳卒中再発率,入院中 4% 4% 4% 4% 3%
脳卒中再発率,3ヶ月後 7% 7% 6% 5% 4%
脳卒中再発率,1年後 10% 9% 10% 8% 5%

NIHSS: National Institutes of Health Stroke Scale, mRS: modified Rankin Scale
modified-Rankin-Scale3_2020

臨床研究

 現在,参加している主な多施設共同研究や治験は下記の通りです.その他,急性期虚血性脳卒中の中で,いわゆるbranch atheromatous disease(BAD)型梗塞における進行性運動麻痺については,多数例を通して病態解明の研究,各種治療の試行を行っており,我が国における代表的な成績を出し,国内・海外での学会発表や海外雑誌への論文投稿も精力的に行っています.

  • THAWS2研究
     睡眠中発症や発症時刻不明脳梗塞でFLAIR陰性患者に対するアルテプラーゼ静注療法の実臨床のおける安全性と有効性を評価する多施設共同観察研究.
  • BAT2研究
     抗血栓療法新時代における脳・心血管疾患患者への経口抗血栓薬の使用実態と安全性を解明する多施設共同観察研究.
  • KOACSレジストリ

     京都地域における経口抗凝固薬服用中の脳卒中患者の多施設共同登録研究.

  • ATIS-NVAF研究
     非弁膜症性心房細動とアテローム血栓症を合併する脳梗塞患者の脳卒中再発予防における最適な抗血栓療法を検討する多施設共同研究.
  • FASTEST試験
     発症早期の脳内出血患者に対する凝固第VII因子投与の有効性と安全性を検証する国際臨床試験
過去に参加した研究に関する論文

ANAFIE Registry
    
Yamashita T, et al. Two-year outcomes of more than 30 000 elderly patients with atrial fibrillation: results from the All Nippon AF In the Elderly (ANAFIE) Registry. Eur Heart J Qual Care Clin Outcomes. 2021 Apr 2;qcab025.

THAWS研究
    
Koga M, et al; THAWS Trial Investigators. Thrombolysis With Alteplase at 0.6 mg/kg for Stroke With Unknown Time of Onset: A Randomized Controlled Trial. Stroke. 51: 1530-1538, 2020.

SAMURAI-NVAF研究
 
   Yoshimura S, et al; SAMURAI Study Investigators. Two-Year Outcomes of Anticoagulation for Acute Ischemic Stroke With Nonvalvular Atrial Fibrillation – SAMURAI-NVAF Study. Circ J. 82: 1935-1942, 2018.
    Arihiro S, et al; SAMURAI Study Investigators. Three-month risk-benefit profile of anticoagulation after stroke with atrial fibrillation: The SAMURAI-Nonvalvular Atrial Fibrillation (NVAF) study. Int J Stroke. 11: 565-574, 2016.
    Toyoda K, et al; SAMURAI Study Investigators. Trends in oral anticoagulant choice for acute stroke patients with nonvalvular atrial fibrillation in Japan: the SAMURAI-NVAF study. Int J Stroke. 10: 836-842, 2015.

スタッフ

 日本神経学会専門医,日本脳卒中学会専門医を含めて6名の常勤スタッフと3名の脳神経内科専攻医,2名の非常勤スタッフが入院・外来診療を担当しています.日本神経学会教育認定施設,日本脳卒中学会認定研修教育病院にそれぞれ認定されており,毎月1~3名の初期研修医が脳神経内科研修を選択し,常勤スタッフとともに主に入院診療を担当しています.

職 名 名 前 卒業
年度
専 門 資 格
部 長 Dr_nagakane201610永金 義成 H7 神経内科
脳卒中
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本神経学会 神経内科専門医・指導医・代議員
日本脳卒中学会 脳卒中専門医・指導医・代議員
京都府立医科大学 臨床准教授
医 長 岸谷 融 H18 神経内科
神経変性疾患
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医・指導医
日本神経学会 神経内科専門医・指導医
日本臨床栄養代謝学会 TNT course修了
医 長 藤並 潤 H18 神経内科
脳卒中
日本内科学会 認定内科医・指導医
日本神経学会 神経内科専門医・指導医 
日本脳卒中学会 脳卒中専門医・指導医
医 長 德田 直輝 H20 神経内科
脳卒中
脳血管内治療 
日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本神経学会 神経内科専門医・指導医
日本脳卒中学会 脳卒中専門医・指導医
日本脳神経血管内治療学会 脳神経血管内治療専門医
日本脳神経超音波学会 脳神経超音波検査士
医 長 沼 宗一郎 H23 神経内科  日本神経学会 神経内科専門医
日本内科学会 認定内科医
医 師 福永 大幹 H27 神経内科  日本内科学会 認定内科医
医 師 西井 陽亮 H29    
医 師 小林 史弥 H31    
医 師 阪口 和希 H31    
非常勤医師 山本 康正      
非常勤医師 濱中 正嗣