耳鼻咽喉科・気管食道外科

内視鏡と外視鏡による低侵襲耳鼻咽喉科手術の技術力が当科の強み

当科の特徴

新しい医療機器をいち早く導入し使いこなすことで、高齢者にもやさしい、より負担の少ない安全、確実な手術を実践しております。以下の領域については自信をもってお勧めすることができる当科の強みとなっており、ご紹介させていただきます。

主な対象疾患

1.内視鏡下耳科手術の確かな技術

現在、耳科手術においては痛みが少なく、真珠腫再発も少ない内視鏡手術が広がってきており、当科では国内導入当初(2012年)から内視鏡下耳科手術を開始しております。新しいドリルシステムを用いた水中下内視鏡手術(図1)と、当科にて開発した経皮的内視鏡下耳科手術(図2)によって、鼓室形成術はほぼ全例が内視鏡手術で完了します。耳の後ろを大きく切る必要はありません。真珠腫が大きい場合であっても、外耳道もしくは約2㎝の皮膚切開から拡張現実型(AR)ナビゲーションシステムを用いて安全に真珠腫摘出を行うことが可能となっております。

     

この内視鏡下耳科手術において当院は、第4回国際耳科内視鏡学会(2022年)でのライブサージェリー担当病院に指定され、2日間で3症例、合計6時間にわたるリアルタイム映像を、当院手術室(図3)から『みやこめっせ』の大会場(図4)に配信いたしました。我々が担当した難手術症例(執刀医:内田)も鮮明な映像とともに大会場に放映され、白熱した議論が行われました。本学会では世界に向けて日本の、そして当院の耳科内視鏡手術の確かな技術力と新しいテクノロジーを発信することができました。

また、保険収載された鼓膜穿孔に対する再生医療(鼓膜再生術)が可能となり、慢性中耳炎など軽症の方はすべて外来での短時間治療が可能となり大変喜ばれております。

2.鍵穴手術による人工内耳植込術

最近、難聴は認知症のリスクとして最も関連が深い因子であるとの報告がなされ、世界中で難聴対策がクローズアップされています。当科でも難聴患者を対象とした補聴器外来を開設すると同時に、補聴器での効果が乏しい方に有効な人工補聴器(人工中耳・人工内耳)での聴力の再獲得に取り組んでおります。特に人工内耳手術は、当科で開発した経皮的内視鏡下耳科手術に拡張現実型(AR)ナビゲーションを組み合わせて手術を行っており、安全で、ダメージが小さく短期間の入院で植え込みが可能となっております(図5)。


さらに、内視鏡手術では困難な側頭骨手術や、顔面神経減荷術、頭頚部腫瘍手術、嚥下手術、音声再建手術といったものに関しては、自由度が高く、精密な手術が可能な外視鏡システムを京都で最初に導入(2022年4月)し、既に多くの症例に使用しています。外視鏡手術とは、今後顕微鏡手術から置き換わるといわれる新しいシステムで、4k3D高画質ビデオモニターと3Dメガネで手術を行います。内視鏡、ナビゲーションシステム、神経刺激システムなどと組み合わせることで、これまで困難とされる手術を楽な姿勢で、より正確に行うことができます。どんな耳科疾患であっても安心して手術を受けていただけるような体制を整えてお待ちしています。

3.重症嚥下障害診療

さらに、医療の高度化、高齢化の影響で増加する重症嚥下障害の患者さんに対し、嚥下サポートチームを立ち上げ、治療方針の決定から、多彩な嚥下手術の選択と施行、術後訓練まで、専門性の高い治療を積極的に行っております。チームメンバーは消化器外科医、神経内科医、呼吸器内科医、消化器内科医、糖尿病内科医、認定嚥下看護師、言語聴覚士、栄養士、薬剤師、等の多職種で構成されています。手術適応の判断には多職種カンファレンスを開き、倫理的問題を含めて十分な検討を行った後、患者さん中心の選択となるよう配慮しております。とくに、重症誤嚥に悩む患者さんにおいて要望の高い、当科で開発した低侵襲な嚥下機能改善型声門下喉頭閉鎖術(図6)や、低侵襲に改良した嚥下機能の改善と同時に声を残す誤嚥防止術については外視鏡を用いて精密に行います。手術適応患者さんが増えておりますので、できるだけ速やかに転院、手術を行えるように病床調整にも取り組んでおります。

4.新しい外視鏡を用いた顔面神経減荷術とシームレスなリハビリ外来

当科では、末梢性顔面神経麻痺の後遺症予防のための顔面神経リハビリテーション外来を設置しており、日本顔面神経学会認定相談医による診察(2021年の時点で、京都府で唯一)と耳鼻咽喉科専門言語聴覚士によるリハビリを合わせて行います。適切な麻痺評価と指導にて後遺症の少ない麻痺改善を目指しており、耳鼻咽喉科一般外来受診後、顔面筋電図検査の結果で、中等度以上の麻痺を認める患者さんに対して、完全予約制で行っております。
筋電図検査の結果で最重症(5%以下)と判定された患者さんには合併症の少なく、効果的な外視鏡下顔面神経減荷術(図7)を提案しております。

この手術で効果を上げるには非常に繊細な手術手技が要求されます。当科では手術に必要な技術と経験に加えて、新しい外視鏡システムを導入し、安全で確実な手術をこころがけております。術後は、適切なリハビリテーションと合わせて、麻痺改善の上乗せ効果が十分期待できますので、ご安心ください。ただし、重症例では早期の診断が治癒率に関与しますので、どうか早めに当院へご相談ください。

5.豊富な治療実績を有する鼻科内視鏡手術と新しい分子標的薬治療

鼻内視鏡手術は多くの経験を持つ安田のもとで手術が行われ(図8)、これまで多くの患者さんに鼻内視鏡手術を提供してきました。さらに新しい副鼻腔炎治療として注目される分子標的薬による治療においても、開発段階から関与し、積極的に行っております。
喘息を合併した副鼻腔炎治療の最終病院としての役割を担っていると考えております。さらに、副鼻腔腫瘍に関しても低侵襲な内視鏡手術での摘出を積極的に行っております。

症例数・治療実績

手術名 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
鼓室形成術・アブミ骨手術・人工内耳(側) 52 59 59 57 77
顔面神経減荷術 13 9 11 8 9
喉頭閉鎖術・嚥下機能改善術 9 8 17 15 16
内視鏡的鼻副鼻腔手術(側) 145 160 161 190 248
甲状腺腫瘍手術 32 25 24 28 22
耳下腺・顎下腺手術 18 21 16 20 17

連携病院・開業医の先生方へ

地域に密着した基幹病院として、標準化された新しい医療を提供しつつ、多くの経験に裏打ちされた医療技術をスタッフ間で共有し、専門性の高い特殊な疾患にも広く対応しております。どうか、お気軽に当院へご紹介、ご相談ください。

当科はNCD登録事業に参加しています。 詳しくはこちらから>>>

スタッフ

職 名 名 前 卒業年度 専 門 資 格
耳鼻咽喉科部長 Dr_uchida201610内田 真哉 H2 耳疾患
顔面神経麻痺
嚥下障害
頭頸部外科
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医・専門研修指導医
日本耳科学会 耳科手術暫定指導医
日本嚥下医学会 認定嚥下相談医
日本顔面神経学会 顔面神経麻痺相談医
日本臨床栄養代謝学会 認定医
気管食道外科
部長
安田 誠 H9 鼻副鼻腔疾患
アレルギー疾患
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医・専門研修指導医
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 代議員
日本アレルギー学会 専門医・指導医
日本鼻科学会鼻科手術指導医
日本鼻科学会 代議員
副部長 森岡 繁文 H18 耳疾患
めまい
頭頸部外科
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医・専門研修指導医
日本耳鼻咽喉科学会頭頸部外科学会 補聴器相談医
医 師 吉村 佳奈子 H25 頭頸部外科 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
医 師 福島 巧貴 R3    

外来当番表

   月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日
新患 吉村 内田 安田   森岡
再来 AM

内田

吉村
森岡
福島
(SAS)
森岡(1・3・5週)
吉村(2・4週)

福島
安田

PM

 

内田
(補聴器)
    内田・森岡
(顔面神経)