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心臓血管外科
低侵襲心臓手術(MICS)

低侵襲心臓手術(MICS)とは

低侵襲心臓手術とは、一般的な心臓手術で使用する「正中切開」と異なり、体の負担を少なくすることを目的とした小さな傷で行う手術です。
MICS:ミックスとよばれMinimal Invasive Cardiac Surgeryが略されて名づけられています。

「正中切開」とは一般的な心臓手術の方法で、胸の皮膚の中央を縦に20センチ程度切り、その下にある骨(胸骨)を切開して行うものです。大きく切開するので、複雑手術に対応でき現在でもスタンダードに行われている方法です。
しかし骨を切開するため、一般的な骨折と同様に術後胸骨が完全に癒合するまで2-3か月かかる上に、胸骨を切開することで骨が感染する縦隔炎のリスクがあります。また傷が大きいと身体への負担も大きくなり、骨の治癒と合わせて回復に時間がかかり社会復帰が遅くなるというデメリットがあります。

3D-TE MICS

完全3D胸腔鏡下低侵襲心臓手術(3D-TE MICS)は、通常の低侵襲手術(MICS)を立体的(3D)に見ることのできるの胸腔鏡(内視鏡)を用いて行う手術で、映し出された画像をモニターに投影し手術を行います。当院では2026年1月より開始しました。

4K-3D内視鏡という超高精細で立体視できるスコープを1cm程度のポート(穴)より挿入し、超高精細な4K-3Dモニターに立体的に映し出すことにより、肉眼で見るよりも高精細な細部の病変まで手術室スタッフ全員で確認できるようにしています。

また主な創部の皮膚切開は4cm程度であり、機械を用いて肋間を広げる必要がないため術後の痛みが軽減し、さらに腋の付近に5mmの小さなポートという小さな3つの傷のみで手術を行うため、術後の患者さんの身体的な負担が圧倒的に少なく、患者さんの早い社会復帰に大きな貢献ができるようになりました。

3D-MICSの手術風景

MICS(低侵襲心臓手術)の特徴

当院で行う3D完全胸腔鏡下MICSは特に傷が小さく、肋骨を変形・損傷しないことから、術後の痛みが胸骨正中切開での手術だけでなく他の直視で行うMICSに比べても格段に少ないのが特徴です。
また胸骨・肋骨を切らずに済むため術中・術後出血量が少ない特徴があります。術後の回復も従来の胸骨正中切開の手術後よりも遥かに速やかです。

3D完全胸腔鏡下MICSではモニターに術野が大きく鮮明に映し出されるため、手術の様子を執刀医だけでなく手術室の全員で把握することができます。
これにより術野での安全確認・異常の早期発見が可能なので、より安全に手術を受ける事ができます。

MICS(低侵襲心臓手術)の適応と注意点

MICS(低侵襲心臓手術)は、すべての患者さんに適応となる手術方法ではありません。
低侵襲心臓手術では複雑すぎる手術が必要な患者さんや、体力的・血管の性状的に低侵襲心臓手術がお勧めできない患者さんもいらっしゃいます。手術において一番大切なことは安全に治療を行うことです。
低侵襲心臓手術(MICS)をご希望の場合でも適応外となる場合には理由を踏まえてしっかりご説明させていただきます。

また、高難易度手術となりますので操作が難しくなることから正中切開と比較し手術時間は同等か長くなる傾向があります。
さらに、止血困難な出血が生じた場合など、手術途中に従来の正中切開手術方法へ変更することもあります。
人工心肺という機械を使用する場合、下肢の動脈を使用するため大動脈解離、脳梗塞、下肢の血流障害などの合併症に注意が必要です。また、手術時間の延長などに伴う呼吸障害(再膨張性肺水腫)のリスクもありますのでその適応は疾患と術前検査の結果を踏まえて慎重に検討します。

適応疾患

当院では、患者さんの症状や全身状態を総合的に評価したうえで、以下のような心臓弁膜症に対して低侵襲手術を行っています。

  • 僧帽弁閉鎖不全症
  • 僧帽弁狭窄症
  • 三尖弁閉鎖不全症

また、大動脈弁閉鎖不全症および大動脈弁狭窄症に対しては、TAX-AVR(右腋窩小切開)を実施しています。